スーツ姿で接客をすると、営業マンに間違われた。
だからといって職人っぽく作務衣を着るのも、なんとなくありきたりでイヤだった。
「髪とヒゲは誰でも伸ばせる」
かつて吉田拓郎が歌った『ビートルズが教えてくれた』の歌詞が心に残り
「自分にもできるかなと思って」と人懐っこい笑顔で話すのは、
224porcelainの代表であり作り手の辻諭(つじさとし)さん。
正確には「髪とヒゲをのばしてボロを着ることは簡単だ」という歌いだしだ。
「考え深そうな顔をするのも楽にできる」「もっと陽気でもいいんじゃないか」と続く歌詞に、
当時やきものづくりに悩んでいた辻さんは、「陽気に楽しく、前向きに仕事をしようと思えた」と語る。
単にインパクトのある歌詞が印象に残って始めたスタイルだが、
パッと見て作り手だとわかるようになったのか、打ち合わせや商談で、話がスムーズに進むのを実感したという。
自分を演出するのも、ものづくりを伝える手段のひとつだ。
なりたい自分に、まず「形から入る」のも悪くない。
最近ではブランドの顔として、取材に応じることも増えてきた。
先日全国放送のテレビに出たときは、片側だけ伸ばした前髪にちりちりとパーマをかけていて、
ジョニー・デップみたい(笑)と仲間内からいじられていた。
そうかと思えば、ある日突然金髪にしたりして周囲を驚かせることも。
自己演出の試行錯誤が続いている。
224porcelainは、そんな辻さんが2012年に立ち上げた肥前吉田焼の新しいブランドだ。
どんな人が作っているのか。
どんなところで作っているのか。
どんな想いで作っているのか。
知ってもらいたいことがたくさんある。
これからどのような成長をみせるのか。
この連載で、224porcelainのいろんな顔をお届けしたいと思う。
文:ハマノユリコ