「現代の吉田焼のあり方を世に問うタイミングなのかなと思っています」
コロナ禍にあったこの数年、文献を読み漁って行き着いた「ハン土」と呼ばれる土を探し回ったり、
吉田で陶石を採掘したり、1650~1660年代の吉田焼の骨董を入手して、かつてのものづくりを想像したり、
「吉田焼とは何なのか」「吉田焼らしさとは何なのか」をずっと考え続けてきた224porcelainの作り手・辻さん。
2月に開催された東京インターナショナル・ギフト・ショーでは、焼成時の二酸化炭素排出量を40%削減し、良品率99%を達成する器「うづら」を発表した。
「有田焼、波佐見焼など肥前地区の磁器は吉田焼も含め、透き通るような白さが美とされているため、
テップンと呼ばれる黒い点や釉薬の気泡が弾けたピンホールがあるものは、検品基準で不良品とされてしまうのですが、
今回、古い文献を紐解く中で、吉田で焼きものづくりが始まった約400年前は、
吉田の山から採掘した陶石とハン土と呼ばれる土を混ぜて作られていたという記述を見つけ、
元々の吉田焼は、きれいな白磁ではなかったことに着目しました」(辻さん)
約1年をかけて開発した「晟土」(せいど)
良品率99%、二酸化炭素排出量40%削減、強度は天草陶石の1.5倍
「あらかじめ陶土にテップンを混ぜることで生まれる、うづらの卵のような表情を個性として活かすことで良品率99%を達成、
さらに釉薬をかけずに焼いても汚れがつかない仕様を実現することで、焼成回数を減らすことができ、
二酸化炭素排出量を40%も削減することができました。強度は通常使う天草陶石の1.5倍あります」と
新開発した素材「晟土」(せいど)について説明する。
これまで辻さんはさまざまなインタビューで、
「山を削り、石を採り、窯を焚く時は二酸化炭素を排出する。焼きものづくりは、悪い言い方をすれば地球を壊す仕事」だと話し、
地球を壊す代償として何をつくるのかを日々考え続けてきた。
「晟土(せいど)は、環境に優しく、強度もあり、不良品率も下げられる魅力的な陶土です。
明るく輝くという意味をもつ『晟』の文字に、肥前吉田焼産地の希望となるよう思いをこめました。
晟土(せいど)を使ったものづくりが次世代のスタンダードとなり、広く世界に受け入れられることを目指します」と意気込みをみせる。
今回製品化した器「うづら」のデザインを担当したのは、プロダクトデザイナー・安積伸さん。
2017年に肥前吉田焼産地で開催したデザインスクールの講師として産地支援をいただいたご縁から、7年ぶりのプロジェクトだ。
初お披露目となったギフトショーの会場では、その繊細な素材感に「これ、磁器なんですか?」と多くの注目を集めていた。
うずらの卵を想起させる斑紋や、丸みを帯びた優しいフォルムも好評で、本格的な販売開始に期待が高まる。
新素材「晟土」(せいど)を使ったものづくりは、224porcelainとしてではなく、
肥前吉田焼らしさを追求する新たなプロジェクト「精成舎」から発表したものだ。
肥前吉田焼という小さな産地が存続していけるよう、「現代の吉田焼のあり方」を模索する辻さんの挑戦が続く。
文:ハマノユリコ