224 Journal

224 JOURNAL Vol.98 – 肥前吉田焼産地の課題に向き合う

今回の224ジャーナルは、恒例の振り返りインタビュー。

コロナ禍の行動制限がなくなり、少しずつかつての日常を取り戻しながら過ごした2023年。
224porcelainの作り手・辻さんにとって、どんな一年だったのでしょう?

「とにかくよく働いた」という辻さんに、2023年を振り返りながら新年の抱負を語っていただきました。

 

” 窯焚き(本焼成)回数 255回、NC切削した石膏ブロック数 277個 ”

−− 2023年の忙しさを物語る数字ですね。
体調を崩された時期もあったと伺いましたがもう大丈夫ですか?

ちょうど秋頃、フランス料理シェフ・小岸明寛さん、茶師・松尾俊一さんとともに行った
食のイベント「ROKUJO CUISINE(ロクジョウ キュイジーヌ)」の頃に体調を崩し、関係者をヒヤヒヤさせ、
もう若くないなと実感した年でもありました。
1ヵ月ほどですっかり復活し、またバリバリ働いています。

2023年は、本焼きの窯焚き回数が255回、NCで切削した石膏ブロックが277個。
朝から働いて、夕食後も夜中までデータ制作の日々でした。石膏ブロックの乾燥待ちが多かったように思います。

とにかくよく働いた一年でした。

おかげさまで売上も過去最高。
とはいえ、従業員数も増えているので、それに合わせて売上も増やさないといけないです。
前年よりも良品率が下がってしまったので反省しています。

 

−− 何か原因があるのでしょうか?
産地の職人不足や人材育成についても課題を掲げていましたよね

2023年の大きな変革に、生地の一部内製化があります。

職人さんも高齢化が進み、生地屋さんは年々減っています。
分業制という産地の特性上、生地を確保するため有田や波佐見の窯元さんたちと取り合っているのが現状です。

生地屋さんのスケジュールが詰まっていて、納期に間に合わない、
もしくは仕事を受けられないといったことも起き始めています。

今後、生地屋さんが増える可能性は低いので、頑張って作ってくれている生地屋さんを大事にしながらも
自社でも生地を作れる体制をとる必要があると判断しました。

それには設備投資も必要なので、しっかり稼がなければと頑張っています。

224porcelainでも求人をして、新たにスタッフが数名増えましたが、
今後は肥前吉田焼の人材育成プロジェクトもスタートさせる予定です。

 

−− ここ数年あたためてきた構想かと思いますが、いよいよですか。

達成できるかわからないですが、あくまで目標として。

職人育成、陶芸作家育成の事業を本格化したいと思っています。
それに伴い、シェア工房を作ります。若い陶芸作家数人でシェアする工房です。
都会ではシェアオフィスが多いと思いますが、それの陶芸家バージョンです。

独立するまでの支援となる場所を作りたいんです。作るだけでなく販売も支援したいと思っています。
肥前吉田焼の窯元会館で組合員の商品の販売はしていますが、組合員以外のものを売る場所がないので。

224porcelainのショップが嬉野の商店街にありますが、作家の収入になるようなギャラリーも作りたいし、
アーティストが滞在して作品制作をおこなう「アーティストインレジデンス」も実施したい!

 

−− 陶芸作家になりたい方や職人になりたい方、移住しなくても産地に関わっていただける
クリエイターに向けて
肥前吉田焼の情報発信をしていきたいと語る辻さん

新作もたくさん作りたいし、欲しい設備もたくさんあって、お金も時間もたくさん必要!
数年かけて実現していきたいと思います。なので、どんどんお仕事お待ちしております!

 

<新作発表のご案内>
そんな辻さんが約一年かがりで進めてきた新たなブランド「精成舎」から発表する新作が、
2月6日(火)~2月8日(木)に開催される東京インターナショナル・ギフト・ショー LIFE×DESIGN
「ACTIVE CREATORS」エリアで初お披露目されます。ぜひご注目ください。

聞き手・写真・文:ハマノユリコ

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