224 Journal

224 JOURNAL Vol.115 – 言葉が通じなくても、アーティスト・イン・レジデンス!

今回の224ジャーナルは、トルコ人クリエイター・フェリデさんへの突撃インタビュー。

英語はカタコト、日本語は話せない。
言葉が通じなくても「吉田が大好き」というフェリデさんにお話を伺いました。

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2025年4月、7ヶ月ぶりに嬉野の地を訪れた筆者(ハマノ)が224porcelain第二スタジオのドアを開けると
そこには不慣れな手つきで排泥鋳込みに挑戦している外国人がいた。
アーティスト・イン・レジデンスで滞在中のトルコ人クリエイター・フェリデさんだ。

昨年3月、吉田で開催された初めてのレジデンス参加者として滞在した彼女は、吉田でのものづくりが忘れられず、
今年4月、二度目の滞在を希望してやってきたという。

トルコの公用語はトルコ語で、フェリデさんがコミュニケーションに使うのはカタコトの英語。日本語は話せない。
その状態でも、ものづくりの作業を通じて対話ができてしまうのだから、職人同士ってさすがだな、などと感心しつつ、
せっかくの機会なのでいろいろ聞いてみたい!

そこで、トルコ語を通訳できるサポーターの方に急遽連絡して(スピーカーフォンにしてオンラインでの三者間通訳)たどたどしいインタビューを試みた。

今回の滞在で作っているのは、大きなティーポット。
昨年、吉田焼産地で急須や土瓶を作っている窯元を視察し、いろいろなものづくりができることを知ったフェリデさんは、
自分もポットを作ってみたいと今回はスケッチを持参した。
おおまかなサイズを入れた図面を224の辻さんに見せて、3Dで形状を起こしてもらい、型の製作を依頼したという。

そこで冒頭の排泥鋳込みの工程につながるわけだが、石膏型から泥漿を流し出す作業をするフェリデさんは
素人目に見ても恐る恐るで不慣れな様子だった(苦笑)。

それもそのはず、トルコでは型を使った器の制作は一般的ではないらしい。
フェリデさん自身はトルコでアトリエをもつ陶芸家だが、型を使う排泥鋳込みや圧力鋳込みといった技法は未経験。
一年前の吉田での滞在で初めてその技術を学んだそうだ。

本来、専用設備が必要な技法だが、せっかくなのでトルコに帰っても型を使った作品作りができるよう、
224では、簡易的な圧力鋳込みの技法(ペットボトルを使って石膏型に流し込むんですって!)を伝授するなど、ものづくり支援もしているという。

「昨年トルコに戻ってから、実際に自分で鋳込んでみた?」と尋ねると
「トルコの土や釉薬は、日本のものよりも品質が劣り、焼成温度も低いので、日本で作ったときと同じような仕上がりにはならないけれど」
と前置きしつつも、作品作りに役立てている様子だった。

さらに日本のものづくりに言及すると、
「職人たちの集中力はすごいですね。繊細なものづくりに日々刺激を受けています」とフェリデさん。

アーティスト・イン・レジデンス滞在中は自分の作品を作るだけでなく、
窯元の業務を手伝うことでさまざまな技術を学ぶことができるのも魅力のひとつ。

「吉田での滞在は、毎日がとても楽しい」と笑顔をみせる。

現場の職人だけでなく、日々の暮らしで関わる地域の人々と過ごす時間も気に入っているようだ。

「一度目の滞在で友達がたくさんできました。みんなとても親切にしてくれて、絆ができたと感じています。
だから、また会いたい、また必ず行きたい!と思いが募って、今回二度目の来日を決めました」

▲ハンドルなどパーツの型

▲パーツは、本体に取り付けるまで乾かないように保管

取っ手やつまみ、そそぎ口など、本体のほかにもさまざまなパーツで構成されるポットは、石膏型の数も多い。

それぞれに射込んだ生地のパーツを乾かないように保管し、張り合わせてポットの形状を作っていく手間のかかる工程が待っている。

これからどんな仕上げをするのだろう?

「普段トルコで作っている作品はカラフルなものが多いので、今回は日本の侘び寂びのようにシンプルなものにしたくて、青磁系の釉薬にするつもり。
滞在中に湯呑みも作りたい」と話してくれた。

あれから数ヶ月。
焼成後の完成品はどうなっただろうか?

フェリデさんのInstagramアカウントには、ポットや土瓶として仕上げた作品が投稿されていた。

@feridenariyan より

 

写真・文:ハマノユリコ

 

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