
「SAGA DESIGN AWARD」は、デザインの力で「人のくらし、まち・地域を心地よく豊かなものにする取り組み」を推進する佐賀県が初開催した新設のアワードだ。
2025年1月に審査会があり、なんと応募総数 94件もの中から、224が取り組む「精成舎」のプロジェクトが大賞に選ばれたという。
大賞を受賞したプロジェクトはこちら↓
地球の環境を守り持続可能な生活を生み出す器 うづら(精成舎)
224が提出した応募資料を見ると、
「有田、伊万里、波佐見、三川内、吉田。
近隣の5つの産地の中で最も小さく、名前を知られる機会の少ない肥前吉田焼を
“Co2削減に取り組む産地” としてPRし、認知度向上を図る」
と意気込みが書かれていた。
事例として取り上げたのは、224ジャーナルでも何度も紹介している新開発の陶土「晟土」(せいど)によるものづくりだ。
本焼成一回で完成させることによるCo2排出量の削減と、
良品率が高い(=不良になる分を考慮して多めに焼く必要がない)ことを加味して割り出した数値を示し、審査委員にアピールした。
SAGA DESIGN AWARD 審査委員の馬場正尊さんは、晟土を使い安積伸さんがデザインした商品「uzura うづら」の美しいフォルムや機能性、
それを実現する職人の技術にも言及し、大賞にふさわしい取り組みとして講評。
「美しいプロポーションと機能との絶妙な融合。完成度の高いフォルムを実現する職人技。強度や独特の質感を生み出す高い技術力。
無駄を出さない循環社会へのメッセージ。そして、吉田焼を地域全体で、次の時代へ運ぼうとする強い意思。
それらすべてを小さな器に凝縮したこの作品は、大賞にふさわしい。歴史に残るスタンダードデザインの名作にさえなり得る。」(馬場正尊)
プレゼンを担当した224代表の辻諭さんは、
「大賞を取るぞと意気込んで応募したものの、皆さんそれぞれに意義のある素敵な取り組みをされているので、
受賞の瞬間、自分の名前を呼ばれたときは、驚きで体がビクッとなりました」
2月に東京で開催されたインターナショナル・ギフト・ショー LIFE×DESIGN では、新企画の展示エリア「FOCAL POINT」に出展し、
そこでも精成舎の商品を展示した224 porcelain。
SAGA DESIGN AWARD 受賞の話題が直近であったこともあり、来場者からもたくさんの祝福をいただいていたようだ。
「ずっと悩んでいたことが一つのカタチとなり、それを評価していただいたことで少し報われた思いです。
とはいえ、産地の問題を解決するのはこれからなので、しっかりPRと販売をしていかなければいけないと気持ちを新たにしました」と辻さん。
筆者もギフト・ショー 「FOCAL POINT」を視察をしてきたが、焼きものに限らず、地場産業に関わる人々が切磋琢磨し、魅力を磨き上げていく力強さを感じることができた。
「次はトロフィーを作らせてもらいたいな」
すでにアワードの運営側のような発想になっている224辻さんの言葉が笑いを誘っていた。
写真・文:ハマノユリコ