224 Journal

224 JOURNAL Vol.10 – 忘れられない夏、うれしの晩夏 –

嬉野晩餐会

 

「今年の夏は長かったような、短かったような、
一つだけ確かなことは、吉田焼にとっても私自身にとっても、
とても重要な夏でした」by 辻諭

さすが、224porcelainの乙女隊を代表するひとりだけある。
青い空を見上げて回想する映画のシーンのように少しばかりセンチメンタルな言葉をもらした。

いや、茶化している場合ではない。この夏、辻さんは本当に多忙だった。

8月26日に肥前吉田焼デザインコンペティションに関連したイベント「産地見学会」を行い、
同日より嬉野温泉街にある和多屋別荘にて「吉田焼ミュージアム」、「嬉野茶寮」がスタート。
8月31日には、嬉野の粋を集めた一日限りの特別な宴「嬉野晩餐会」が開催された。

そのどれもに重要な役割として参加し、作家としても新作を数点発表した辻さん。
嬉野晩餐会の料理に合わせ、茶師・松尾俊一さんや鮨職人・木島英太朗さんの高い要求に全力で応えた渾身の作は、
食事をした方々にも感動をもたらしていた。

「由緒ある和多屋別荘の水明荘『洗心の間』という静謐な空間で、
自分が作った器を使い、素晴らしいお茶とお料理でおもてなしをする。
実に作り手冥利に尽きる幸せな時間を過ごすことができました」

いつものごとく製作は遅れ、開催日の前日に焼き上がったものもあるほどの綱渡り。
「スケジュール管理が下手で」と苦笑いしつつも、その顔は晴れやかだった。

「35歳までに吉田を代表する人間になりたい」と語っていた辻さん。
言葉通り、今や吉田を代表するひとりとして、着実に歩みを進めている。
※写真は、入道雲をイメージした器「cloud nine」(至福の状態の意)。
この日のために特別に製作されたフタものの器と小皿で、晩餐会ではお造りを盛って提供された。

文:ハマノユリコ

協力:和多屋別荘
http://www.wataya.co.jp

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