新ブランド「精成舎」、新シリーズ「うづら」を発表します。

はじめに
肥前吉田焼は約400年の歴史の中で不況や戦争など様々な苦難を乗り越え、現在に至ります。明治時代には旧士族の出資を中心とした陶器製造会社、精成社(社の窯)が設立され、先人たちの努力によって海外への輸出に成功し、繁栄したという歴史を持ちます。しかしその後は、平成元年をピークに売上高は減少し約1/8まで落ち込み、コロナ禍を経てさらに3割減少しました。職人は高齢化し、若い職人も少なく、産地は危機に瀕しています。
この様な状況の中、今を生きる陶工として、50年後、 100年後も続く産地となるべく、先人たちが作った精成社のように吉田焼を栄えさせ、若い人たちが集う場所になるようにという願いを込め、ブランドネームを「精成舎」と名付けました。

 

製品名 うづら について
英語名:uzra
デザイン:安積伸

・釉薬を用いない事で発生するマットな表面と、愛らしく丸みを帯びた形状が、卵の殻の様な柔らかく美しいグラデーションの陰影を生んでいます。
・鉄粉を交えた磁器土が、うずらの卵を想起させる斑紋の入った表情を導きます。
・新たな磁器(磁器産業)の未来を拓く技術、卵から孵化し、世界に飛び立って欲しい、という祈りを込めた名前となっています。

うづら のデザインについて
・このプロジェクトのために開発された土・製造方法が、肥前吉田焼の新たな時代の幕開けとなる事を祈りつつ、製品デザインのテーマを「はじまりのうつわ」としました。
・製品アイテムの品ぞろえは、新生活を始める人にとって一式あれば日常のほとんどの食事に対応できる、「はじまりのうつわ」として汎用性の高いものとなるよう意識しています。
人生で初めて一人暮らし、あるいは二人暮らしを始める人たちへのエールを込めて、機能的かつ新​生活の彩りとなる様なデザインを心がけました。器の色は二色で展開していますが、2色の器を混ぜて使用する事でテーブルの上に華やかさをもたらします。また、スタッキングやネスティングによる収納効率も高く、新生活を始める人に贈るギフトセットとしても適したものとなる事を目指しました。
・製品自体のデザインに関しても「はじまりのうつわ」にふさわしく、日本で窯業が始まった時代の産物である「縄文土器」をイメージの源泉としています。縄文土器と言えば火焔土器などのエキセントリックな印象ばかりが強く残りがちですが、調理や貯蔵に使用されていた鉢や甕は縄目文様を除けば驚くほど簡潔な姿をしており、人の手による温かさを感じさせる形状が特徴です。日本の窯業の始まりの時代に見出だされた、シンプルさと優雅さを備えた美意識を改めて「はじまりのうつわ」として現代に蘇らせたいと考えました。

新陶土「晟土」について
晟という文字は、明るく輝くという意味を持ちます。この土が吉田焼、ひいては日本の窯業にとって明るい未来をもたらすものとなるよう、祈りを込めました。窯業は元来、山を削り、石や土を掘り、焼成の際に二酸化炭素を排出する産業です。地球環境に負荷を与える代償として生み出すべき物の価値とは何なのか、真剣に考えなければならない時代が来ています。次世代に向けて私たちは何を為すべきなのか、1年をかけて研究を行い、環境負荷の低い新たな素材と製造法を開発しました。
この素材は一般の磁器に比べ1.5 倍の強度を持ち、焼成時に排出する二酸化炭素量も通常の磁器製造より40%削減されています。
さらにこの素材では、製造における不良率の低下にも取り組んでいます。通常の磁器製造では、テップンと呼ばれる黒い点や、釉薬の気泡による小さな穴(ピンホール)があいたものは検品基準を満たさない2 級品とされ、高い技術を持つ窯元であっても約10%の不良品が排出されます。今回開発した素材は予めテップンを混ぜる事で、その表情を特徴としています。さらに、釉薬をかけずに焼いても汚れがつかない仕様になっており、良品率99%を達成しました。

この土が次世代のスタンダードとして、広く世界に受け入れられる事を目指します。

今回発表する商品は未発表でアクティブクリエイターズで初お披露目します。